アール・ブリュットとは

アール・ブリュット(Art Brut)とは?

「生の芸術」という意味のフランス語。artは芸術、brutはワインなどが生(き)のままであるようすをいい、画家のジャン・デュビュッフェが1945年に考案したカテゴリーである。
正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した、既存の芸術のモードに影響を受けていない絵画や造形のこと。

d.hatena.ne.jpより)

その性質・経緯から、元来アートとして意図を持って制作されたわけではない作品が、周辺あるいは後世の人物により発見され、アートとして評価されるというケースが多いようです。国内でも広く知られている作家としては、山下清、異色の建築物『理想宮』を造り上げた郵便配達人フェルディナン・シュヴァル、ヘンリー・ダーガー、などが挙げられます。

スイスのローザンヌにある美術館、アール・ブリュット・コレクションでは、文化的な伝統や社会的規範などにとらわれずに作られたアール・ブリュット作品を世界各地から蒐集し展示していますが、その作者は囚人、精神病者、何らかの理由で社会から見放された孤独な人々などで、芸術的伝統にとらわれない独自の表現方法を用い、時にはこれまで芸術では利用されなかった材料を用いたり、使用されたことのない技法が用いられています。

近年の研究により、日本の障害福祉現場から障害者による優れたアール・ブリュット作品が次々に発見されていることにより、障害者によるアートにも注目が集まっています。(ただし、アール・ブリュットであることと作者に障害があるかどうかは、本来は全く関係がありません。)

「アウトサイダー・アート」は「アール・ブリュット」の英訳語とされていますが、ニュアンスや解釈する人によっては必ずしも同一の概念とは限りません。他にも、類似または部分的に重なりあう概念として、主体や文脈によって以下のように様々な呼称で扱われる場合があります。

  • アール・ブリュット (Art Brut)
  • アウトサイダー・アート (Outsider Art)
  • セルフトート・アート (Self-taught Art)
  • ナイーヴ・アート (Naïve Art) = 素朴派
  • プリミティブ・アート (Primitive Art)
  • アール・インコグニート(Art Incognito)
  • フォーク・アート (Folk Art) も類似文脈として扱われる場合があるようです。

また、国内で(多かれ少なかれ)障害福祉が絡む文脈で用いられている語彙として、次のような呼称が見受けられます。

  • ボーダレス・アート
  • エイブル・アート
  • アール・イマキュレ (Art Immacule) = 無垢の芸術
  • ワンダー・アート
  • バリアフリー・アート(バリアレス・アート)
  • チャレンジド・アート
  • 障害者アート

また一方で、カテゴライズすること自体を良しとせず、純粋に現代アートの文脈で扱ったり、カテゴライズしない事を強調するためにあえて『ただの(Just)アート』と呼んだりすることもあります。

当サイトにおいては、このような(ある意味、曖昧な)領域を総合的に扱いながら、できるだけ各情報の発信源による呼称をそのままお伝えしますので、読者の皆様にも、それぞれの文脈にご留意いただければ幸いです。